~保育士の知られざる日常~
こんにちは!
みなさんは保育士ってどんな仕事なのか、ご存じですか?
今日は保育士として約13年以上現場で働いてきた私が、
「保育士って、そもそもどんな仕事なんだろう?」という素朴な疑問に
分かりやすく答えたいと思います。
「保育士って、子どもと遊ぶだけの仕事?」
そんなふうに思われることもあります。
でも実際は、子どもたちの命を預かり、その成長を支える責任ある仕事なんです。
ここでは保育士の仕事のあれこれを簡単にお話していきたいと思います。
【目次】
- ①事務作業が多い!
- ②子どもたちが午睡している裏では?
- ③どうやって活動を決めるの?
- ④行事の準備って何をしているの?
- ⑤保護者との面談とは?
- ⑥進級に向けての準備とは?
- ⑦会議っていつ、どんな会議をしているの?
- まとめ
①事務作業が多い!
そうなんです。保育士は作ったり書いたりしなければならない書類が、本当にたくさんあります。
最近ではICT化が進み、便利になった部分もありますが、
それでも書類作成は精神的にも負担が大きいものなんです。
どんな書類があるのか、主なものを挙げてみますね。
〈主な書類一覧〉
・年間計画
1年間の保育目標や、進級時に子どもたちに身につけていてほしい姿を、
生活・食事・保護者との関わりなどの項目に分けて記入。
・月案
1か月間の保育内容や行事、子どもたちに育ってほしい姿、前月の様子などを記録する。
・週案
1週間分の保育内容や行事、成長の目標、前週の子どもの様子などを記入する。
欠席者の情報、その日の活動内容(散歩・室内遊びなど)、子どもたちの様子、全体の反省点や改善点を記録する。
・連絡帳・連絡ノート
子どもたちの様子や、どんな遊びをしていたかなどを保護者に伝えるために記入する。
・食事の量
食べたものや量、残した量などを記録する。
・排便の有無
特に0〜2歳児では、便の状態や時間などを記入する(例:○○:○○ 普通便)。
・ヒヤリハット報告
怪我につながりそうなヒヤッとした出来事や、実際に怪我をした際の状況・部位などを
詳細に記録する。(アプリによって形式は異なります)
・事故報告書
通院や入院が必要な怪我(全治1か月以上)の場合、状況や症状を記録し、
イラストも添えて国に提出する。
・児童票
月ごとや期ごとに、子どもの成長の様子、保育者の関わり方、感染症や怪我の記録などをまとめる。
・身体測定の結果
身長・体重を測定し、専用の用紙に記入して保護者に渡す。
・出欠票
毎日の登園・欠席状況を記録し、月末に集計する。
・クラスだより
クラスの様子や保護者へのお願い・お知らせなどを記入し、配信または配布する。
今ざっと挙げただけでも、これだけの書類があります。
でも、日中は子どもたちと過ごす時間。書類整理に集中するなんて、正直言って無理なんです。
一瞬でも目を離せば、転倒したり、危ない場所へ行ってしまったり…。
特に0〜1歳児は、好奇心がどんどん育っていく時期。
何にでも興味を示すので、一瞬たりとも目が離せません。
では、いつこの膨大な事務作業をこなしているのか?
それは「午睡(お昼寝)中」なんです!
子どもたちが眠っているわずかな時間に、保育士は一気に書類と向き合います。
静かな時間の裏で、頭も手もフル回転。やることがいっぱいですが、どれも大切な仕事です。
②子どもたちが午睡している裏では?
多くの園では12:00〜15:00頃が午睡(お昼寝)タイムで、保育士にとっては“静かな戦場”とも言えるこの時間。
この時間中に事務作業に加えて、以下の6つの業務をこなしています。
- おもちゃの消毒:ピューラックスを薄めた液で、口に入れたものなどを拭き、乾かしてから再使用。
- 机・壁などの消毒:特に0歳児室では、触れた場所を丁寧に消毒し、衛生管理を徹底。
- 着替え・おむつの補充:間違い防止のため、確認しながら補充。
- 使用済みおむつ・ゴミの処理:午前中だけでも大量になり、自治体のルールに従って分別・廃棄。
- 水分補給の準備:汗をかいた子どもたちのために、午後用の飲み物を用意。
- 午睡チェック:SIDS予防のため、0歳児は5分おき、1歳以上は10分おきに呼吸や寝姿勢を確認。
以上のことを、子どもたちを起こさないように静かに、でも迅速に保育士は動いています。
そして、この午睡中に休憩も取らなければいけないんです…!
ですので、クラスの先生と交代で休憩を取り、子どもたちを見守る先生が必ず入れるように
体制をとっています。
③どうやって活動を決めるの?
保育園では「週案」という計画表に沿って、1週間の活動内容を決めています。
たとえば「月曜日はお散歩」「水曜日は製作」など、曜日ごとに予定が立てられています。
でも、子どもたちは毎日違う様子を見せるので、予定通りに進まないこともよくあります。
その日の子どもたちの様子や体調に合わせて、「お散歩をやめて室内遊びに変更」など、
柔軟に対応する必要があります。
そのため、週案には「室内での遊び内容」や「お散歩の行き先」などを細かく書く保育士も多く、
当日の様子を見ながら先生同士で相談して活動を決めています。
ただし!他の担任が振替休日や遅番勤務で不在になることもあり、
1人で判断しなければならない場面もあります。
新人保育士にとってはとても不安で、前日に話し合う時間も取れないことがほとんどです。
④行事の準備って何をしているの?
秋から冬にかけて、運動会や発表会など、子どもたちの成長を保護者の方々に見せる行事が
一気に増えてきます。
この時期によくあるのが「白の無地Tシャツと黒いズボンでお願いします」という園からのお願い。
なぜ白なのか?ご存知ですか?
それは、「衣装が映えるから」です。
不織布やカラーポリで作った衣装を重ねると、白が一番きれいに見えるんです。
では、その衣装はいつ作るのか。
それは、子どもたちが午睡(お昼寝)している間。
先ほども話した通り、日中は保育で手が離せず、他の先生に交代してクラスに入ってもらうのも
難しいため、若手は残業して仕上げることも多いです。
さらに、予行練習の反省をもとに衣装や構成を修正したり、破れた衣装を作り直したり、
BGMを探したり…。
職員会議で構成を練り直す作業も地味に大変です。
また幼児クラスでは、1人で20人以上の衣装と大道具を担当することもあり、
保育士はこの時期、本当に忙しくなります。
行事の裏には見えない努力とプレッシャー、そして時には涙もあるのです。
⑤保護者との面談とは?
保育園では毎年、多くの保護者が個人面談を希望します。
面談では園での子どもの生活や食事の様子を伝えたり、保護者の悩みや不安に耳を傾けたり、
質問に答えたりします。
時間は15〜30分ほど。保護者の約9割が参加するほど、ニーズの高い時間です。
特にコロナ禍以降、保護者が園内の様子を直接見る機会が減ったことで、
「先生から直接話を聞きたい」という声が増えました。
保育士は、保護者の不安に寄り添いながら、子育てを支える存在でもあります。
「私だけ?」「これでいいのかな?」そんな悩みに共感し、共に子どもの成長を見守ることで、
保護者が子育てを楽しめるようサポートしています。
面談を通して、保育士は家庭の様子を知り、子どもへのかかわり方を考えます。
時には「困っていません」と話す保護者が、ふとした一言で本音をこぼすことも。
だからこそ、保育士は言葉選びや話し方に細心の注意を払いながら、一人ひとり丁寧に向き合っています。
⑥進級に向けての準備とは?
2〜3月になると退職・異動の発表があり、園長との面談後に来年度の担任が決まります。
そこからようやく準備がスタートするため、先生たちは「早く発表してほしい!」と
毎年そわそわしています。
発表が早い園では計画的に準備できますが、直前の園では慌ただしくなりがちです。
準備内容は主に以下の通りです。
〈準備物一覧〉
・出席票・名簿の作成
・靴箱・ロッカー・上着入れの名前貼り替え
・新入児のマーク決めと貼り付け
・着替えや上着入れなどのかごの破損チェック(必要なら購入または牛乳パックで作成)
・新クラス担任との打ち合わせ
・おもちゃの破損確認
・ロッカー・床・棚の清掃と引き渡し
・保育者の私物の移動
一見シンプルに見える新年度準備ですが、実は事務作業との同時進行で大忙し。
担任は月案・週案の確認、児童票のまとめ、年間計画の振り返りなども並行して行うため、
目が回るほどの忙しさになります。
さらにこの時期は、子どもたちは進級への期待で気持ちが浮つきやすく、怪我や事故が増えがち。
園によっては3月後半から新しい保育室に慣れる時間を設け、
4月の環境変化による不安を減らす工夫もされています。
⑦会議っていつ、どんな会議をしているの?
「会議」と一言で言っても、園ではさまざまな種類の会議があります。
主に以下のような会議が行われています。
・職員会議:全職員で集まり、行事や予定の確認、各クラスの子どもの様子を共有する。
・乳児会議・幼児会議:年齢別に分かれ、クラスの様子やテーマ(例:室内遊び、絵本など)について話し合う。
・リーダー会議:各クラスのリーダーが集まり、予定や課題を共有・検討する。
・係りの会議:行事や園内係(安全リスク係、図書係など)の担当者が集まり、内容や課題を話し合う。
これらの会議は、午睡中や夕方に空いている保育室で行われることが多く、
夜の会議では軽食(おにぎりやサンドイッチなど)が出る園もあります。
しかし会議の前後に会議に必要な書類や会議事録などの資料作成も必要なため、
会議が増えるほど保育士の負担も大きくなります。(AIを導入している園もあり)
【まとめ】
ここまで保育士の仕事について、項目ごとにご紹介してきました。
もちろん、園によって取り組み方や仕事内容はさまざま。日々の業務量や負担を減らすために、
様々な工夫しながら取り組んでいる園もあります。
私自身、「子どもが好き!」という気持ちだけでは保育士は続けられない仕事だと、
先輩たちから何度も教わってきました。
でも自分のクラスに入ると、子どもたちが見せてくれる表情や仕草に癒され、笑わされ、
エネルギーやパワーをもらいます。時にはその言葉に嬉し涙を流すことも!
「子どもが好き。子どもたちの成長を見ることが楽しい。だから頑張れる!」という思いを持って、
一生懸命働く保育士が全国にたくさんいます。
どんなに忙しくても、すべての子どもたちに分け隔てなく、たくさんの愛情を込めて
日々接している保育士の仕事を、ぜひ多くの方に知っていただけたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
文責:夏山 智